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さよなら、田中さん|書評(ネタバレなし)
ごきげんよう、文学YouTuber”ベルりんの壁”のベルです。
昨年、文学界を賑わせた短編小説集「さよなら、田中さん」。
著者の鈴木るりかさんが、14歳の現役女子中学生ということで話題になりました。
脅威のスーパー中学生の作品は、その肩書なくしても素敵な作品でした。
書評動画をぜひご覧ください!
※ネタバレなし
さよなら、田中さん|書評(ネタバレあり)
動画ではネタバレなしでお送りしましたので、ここではネタバレを含め、全5話収録の連作短編を1話ずつ振り返ってみます。
今回は、1編目の「いつかどこかで」です。
さよなら、田中さん|概要
14歳スーパー中学生作家、待望のデビュー
田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで過ごしている。そんな花実とお母さんを中心とした日常の大事件やささいな出来事を、時に可笑しく、時にはホロッと泣かせる筆致で描ききる。今までにないみずみずしい目線と鮮やかな感性で綴られた文章には、新鮮な驚きが。
※ここからネタバレあり
さよなら、田中さん「いつかどこかで」|ネタバレ
主人公の田中花実(小6)は母子家庭で、父親がどんな人かを知りません。
特に不幸とは思っていないけれど、濁す母に「父は犯罪者なんじゃないか…」などと子供らしい想像を膨らませています。
学校で、不審者情報が流れている中のことでした。
花実は知らないおじさんに声を掛けられます。
「もしかして、お父さんが出所してきた?」なんて思うわけですが、おじさんは友達の優香ちゃんのお父さんと言うではありませんか。
でも、今のお父さんじゃないらしい。
優香ちゃんに伝えると、「前のお父さんと二人っきりじゃ会っちゃいけない」と言います。
だったら花実と3人で会えばいいじゃん!
ということで、ファミレスに来たご一行。
いつも贅沢できない花実は「何でも食べて良いよ」によだれだらだら。
お澄まし優香ちゃんには理解不能です。
このまま夢のDランドへ行ける選択も提示され、しかし、なぜか優香ちゃんはB級遊園地を希望します。
優香ちゃんにとっては思い出の場所でした。
束の間の再会も終わり、お互い平穏な日常に戻るのかと思いきや…
翌日のテレビに映ったものは、優香ちゃんのお父さんの顔写真と“横領で海外逃亡”の文字。
昨日はとても大切な、そしてほろ苦い1日となったのでした。
さよなら、田中さん「いつかどこかで」|感想
小学館主催『12歳の文学賞』大賞受賞作「いつかどこかで」(小6時)を大幅改稿したものです。
主人公の友人とその父親の再会劇を見事に書き切っています。
私はこの1編目で完全にハマりましたね。
まずは、観察眼が鋭すぎる!
母子家庭の子供目線で捉える”家族”をしっかり映します。
子供ながらに内緒の話にしなきゃいけない…という思慮深さと緊張感も伝わりました。
また、風変わりで嫌われている担任の木戸先生の描写は、周りに流されず、自分の目でしっかり見た物を花実に乗せているようです。
次に、語彙力!
ところどころ出て来る諺や教養知識においては、大人顔負けでしょう。
そこに、ユーモアと人情で人の気持ちを動かすのですから、彼女の頭の中をもっと覗きたいという気持ちが高まります。
“汚職事件”は”お食事券”にしか聞こえない年頃で、冒険心を携え、最後にここまでの見事なオチをつけてきたことに驚きを隠せません。
ショックではあるけれど、優香ちゃんは良いお友達を持って、次へ強く生きることができるような気がします。
シナリオや漫画にも挑戦したいという鈴木さん、この起承転結を体験したら挑戦している画が眼に浮かびますね。
あ、でもいくら前のお父さんでも秘密で会うのはマジで危ないからね!フィクションフィクション!
なお、動画内で「2017年読んだ本ランキングだったら上位3位に入るかも」と発言していた記事はこちらです。
合わせてご覧いただけると嬉しいです!
それでは、ごきげんよう。
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